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宇宙ステーションと無線で話そう!


宇宙飛行士との交信に使うアンテナを屋上に運ぶ、青山学院初等部アマチュア無線クラブの児童ら(同学院初等部提供)
交信10分 授業に刺激 英語、科学…興味も広がる

 国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士とアマチュア無線で交信しようという試みが、国内の小中学校でも広がってきた。上空400キロのステーションから届く生の声が、子供たちの宇宙や科学への興味をかき立てている。(滝田 恭子)

 春休みを控えた東京・渋谷の青山学院初等部(樋口善一部長)の理科室では、アマチュア無線クラブの部員が宇宙飛行士への質問を考えていた。

 「流れ星は見えますか」、「宇宙では、においはあるのですか」、「宇宙ステーションはどうやって掃除するのですか」――。

 交信可能な時間は、90分で地球を1周するステーションを、校内に設置するアンテナで追尾できる約10分だけ。全校生徒から集めた300近い質問をすべてぶつけるわけにはいかない。

 結局、13問を選択。秋に予定されている交信に向け、英会話練習を行う。

 5年生の福田英梨子さん(11)は、「宇宙ステーションに関するビデオを見ました。水があっという間に丸まっていく様子がおもしろかった」と、飛行士と話す日を心待ちにしている。

 子どもたちと宇宙飛行士がアマチュア無線で交信する「ARISS」(Amateur Radio on the International Space Station)というプログラムは、米航空宇宙局(NASA)の提唱で2000年に始まった。これまで米国を中心に世界で120校以上が交信に成功している。

 日本では2001年11月、埼玉県入間市児童センターの無線クラブが、初めて交信に成功。学校としてはこれまで小学校2校、中学校2校が実施し、青山学院初等部を含めて8校が申請中だ。交信可能な時間を調整するため、申請から交信まで約1年かかる。

 交信時間そのものは短いが、飛行士と話すための英語の訓練や、宇宙、無線の知識について、事前の学習が必要になる。

 神戸市西区の市立平野小学校は昨年2月18日、国内の学校では初めて交信した。英語の勉強には、地域の外国人を講師として小学校に派遣する市の制度を利用。飛行士への質問を中心に発音練習を行った。

 日本アマチュア無線連盟の会員による電波教室も開かれた。宇宙ステーションの移動に伴い、児童らはステーションと交信する電波の周波数が、ドップラー効果によって高くなったり、低くなったり、変化する現象も学んだ。

 また交信直前の2月4日には、宇宙航空研究開発機構の菊山紀彦(としひこ)主任研究員が、180枚のスライドを使い、国際宇宙ステーションの生活や宇宙から見た地球について説明した。

 NASAのドン・ペティット飛行士に「星や月はきれいに見えますか」と質問した同小6年の田中愛子さん(12)は、「遠い宇宙に自分の声が届いたことに感激した。ステーションから神戸や大阪の海がきれいに見えると言われて、飛行士を身近に感じた」と言う。

 同小の三木博志校長は、「自分たちの生活と宇宙がつながっているという印象を、子どもたちは抱いたと思う。英語や理科への興味を引き出せただけでなく、世界で起きている出来事に関心を向ける好機にもなった」と話している。

国際宇宙ステーション(ISS) 日米欧など15か国が、地上約400キロ・メートルの軌道上に建設する巨大な有人施設。98年から部品の打ち上げが始まった。建設途中ながら、2000年から米露の飛行士が滞在し、実験・観測などを行っている。

 (2004/3/22)

 

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