これは入間市教育委員会の主催によるもので、アマチュア無線を使って直接宇宙飛行士と交信することで、子どもたちに夢を与え、科学への興味や関心を持つ機会とすることがねらいであった。
日本でアマチュア無線を運用するためには、電波法と無線工学の国家試験に合格する必要がある。中学二年でこの資格を取って以来、個人的に、そしてこの無線クラブで活動してきた。近年日本では、携帯電話が普及し、アマチュア無線の人気は下がり気味である。しかし阪神大震災直後の有線電話回線がままならない時に、回線を使用しない電波による無線が大変役立ったという。また、外国では国王クラスにまで趣味として人気があるようだ。
そしてことし、児童センター無線クラブに所属する高校生以上のボランティアの多くが、子どもたちに夢を与える活動はないかと考え、アメリカ航空宇宙局 (NASA)の国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士と交信するということを計画し、NASAから許可が出た。
それから無線クラブに所属する児童をはじめ、市民からも宇宙飛行士に対する質問を公募した。また、交信当日のオペレーターには、資格を持つ十四人の小、中学生と高校生が選ばれた。私は、交信が成立するまでのリード、交信中の指揮をするマイクコントロールを担当した。
当日は小学生の保護者をはじめ、政府や地方自治体、報道関係記者が見守る中、ついにアマチュア無線による日本初の宇宙交信に成功した。交信できるのはISSが日本上空を通過するわずか十分間。「日本やオーロラ、しし座流星群はどのように見えるか」「地球と宇宙はどちらが暮らしやすくて楽しいか」など、小、中、高校生が英語で用意した二十の質問を宇宙飛行士に投げかけた。その質問に対し、宇宙基地船長から「オーロラは天使の羽のようにすがたや形を変えている」「物を置いても動かない地球のほうが暮らしやすい」などの回答があった。交信した小、中、高校生も大変うれしそうで満足したようすだった。
今回のアマチュア無線による交信は、日本初の試みであった。地球と宇宙という長い距離を交信でき、目的を達成できて私自身ほんとうに感動した。そして将来は通信関係の職業につきたいと確信するでき事となった。
(えなり あきひこ=埼玉・県立所沢北高卒)